2014年8月4日月曜日

続・若い女性の腹痛~忘れちゃいけない ”卵巣出血” 意外と多いかも…   2012年9月22日 記事


120922inu9月22日(土) 秋分の日
 
 今日は日中はかなり熱いと感じましたが、気温は30度以下でした。

 朝夕めっきり涼しくなり、2ヶ月ぶりにエアコンをつけなくても夜寝られるようになりました。

 愛犬ココアも散歩の後も、ぐったりすることなく元気に過ごしています。

 店頭には、すでに秋の味覚がおいしそうに並んでいます。

 幸水などの赤梨人気の昨今ですが、押され気味で品薄の青梨 ”二十世紀” が昔から小生の好物です。甘すぎず、酸味もあってウマイと思うのですが…そんなことをいうのは春の味覚 ”八朔” 好き同様に世間から見れば少数派です…
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さて、今回は ”若い女性の腹痛シリーズ” 続編です。

 20歳代後半の女性。以前腹部手術を受けたことがある。

 3日前から続く下腹部の鈍痛で当科を受診。生理も順調妊娠の可能性無し。食事とは関係なく、吐気や下痢は伴わず、やや便秘気味、発熱無し。

 最終月経期間を本人に確認して妊娠は否定的でしたので、腹部単純写真を撮ったところ、大腸内にガスと便塊が目立ちました。

 腹部エコーでは腹水や卵巣腫瘍は確認できず
 院内採血にて炎症反応もなし

 術後の腸閉塞や子宮外妊娠、卵巣嚢腫もなく、じゃあ便秘かな?という事で、緩下剤を処方して数日様子を見てもらうことにしました。

 初診から3日目の夕方、腹痛がひどくなったといい、彼女は再来しました。

 やはり他には症状はなく、七転八倒するような激しい腹痛ではないものの、鈍い痛みが1日中続くと言います。彼女の視線には

言われたとおりに薬を飲んだのに良くならないなんとかしてよこのヤブ医者先生ッ! 」

というサインが見てとれます (^_^;) 。

 うーむ、これはヤバいかも…。

 でも当院で検査を続けても原因が明らかになるとは思えない…ということで、最寄りの総合病院に紹介しました。夕方遅くでしたが、担当医が快く引き受けて下さり、ホッとしました。
 数日経った朝、担当医から連絡がありました。

 彼女は
腹部CTで所見があったため、 ”急性腹症” で入院した と。
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 その時点で病名は判明しませんでしたが、さらに数日後、入院主治医から御返事があり、 ”卵巣出血” 
で、1泊入院の後、無事退院したとのことでした。

 そういえば、若い女性の下腹部不定愁訴の原因の1つとして、以前も 
卵巣出血” に当たったことが
ありました。

 ネットで 卵巣出血 について調べてみると、結構臨床的には重要な病態(疾患とはいえない?)のようです。

 卵巣表面に出来た卵胞という ”はれもの” が破れて、なかの卵子が ”排卵” されるのですが、その卵巣表面に出来た ”傷(生理的なもので病的ではない)” から出血が続き、出血量は最大1Lにも達することがあるとか。ただ、ほとんどの場合は微量の出血で終わり、特に治療は必要ないとのこと。
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 なるほど、今回もひょっとしたら再来の時にエコーを当てていたら、腹水が見えたのかも?とちょっと悔しくもありましたが、迅速に対応できたことは良しとしようと前向きに考えました。

 なお、専門医によると、卵巣出血には 

「90%ルール」 

という以下の3つの法則があるそうです(スポーツルールみたいですが…)。

① 90%が右側の卵巣出血

② 90%が黄体期(月経周期の
 15~28日目、生理の初日から約
 2週間後、基礎体温が
 高温期になる頃)に発症
③ 90%が発症の前2日以内 
 に性交歴あり

その理由については以下と推察されているそうです。

① 左側はS状結腸が被さって黄体破裂が起こりにくい

② 黄体出血が圧倒的に多いため

③ 性交刺激により黄体破裂が誘発されやすい

病気ではないけれど卵巣出血、やはり若い女性の腹痛は侮れません。 


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